超絶的秀才の作った心電図技術の確立
理系の大学教育で最も難しい科目の一つは物理学の中の電磁気学です。電気と磁気に関する勉強だと思ってください。この学問が発達したのは19世紀のドイツで、ユダヤ人の研究者が多数、定理や法則を見つけています。彼らは若く、カミソリみたいな頭脳の持ち主でした。電磁気学、難しいと思っていると、医学史上この電磁気学の知識を縦横無尽に使って診断法を確立した話があります。本日はそのお話しです。
ところで、人間の心臓には電気が流れております。体の表面で電気信号を拾ってグラフに測定して心臓を診断するという事を考えついた医師がおりました。オランダの医師であるウィレム・アイエンホフト(Willem Einthoven)です。彼は難解な電磁気学が得意で、その他理系の学問に精通しておりました。 この男が心臓の電気信号から診断をつける心電図の開発者です。
アイエンホフトはグラフに心臓の波形を記録していき、波形から心臓のどの部分からどこに向かって電気が動くのかを解析できるようにしました。これには当時発達中であった高等数学である線形代数、ベクトルなどの概念を使っております。また、波状の解析にはフーリエ解析という数学知識を使っており、 他に微分方程式やら統計学やら、もちろん心臓の解剖学、生理学の知識も必要で 心電図技術開発にはものすごい理系科目の基礎素養が要求されております。 でもそれは心電図診断法の開発に相当な頭脳が要求されるというだけで、実際に心電図を扱ってみると、 ちょっとしたコツが必要ですが、心電図を1000枚も読めば誰でも正確に診断できるようになります。開発は難しいけど、使用は簡単という事です。皆さんも、コンピュータの原理はわからなくても、コンピュータを使うことはできますよね。同じ事です。
一旦、心臓の正常の電気信号の流れがわかると、今度は心筋梗塞の時は正常からどう変化するのかが重要になってきます。そこで、心筋梗塞の患者の心電図を記録し、患者が死亡したら、解剖してどこが異常だったのかを心電図と比較して、どの異常だた心電図はどうなるかを記録していけばいいのですが、これが時間がかかるのです。アイエンホフトは熱中してこの研究に励みました。
ある時、アイエンホフトが実験している建物のすぐ隣で火事が起こり、彼の建物も類焼’の危険に晒されましたが、消防士たちが避難誘導のため、アイエンホフトの実験室に入ってみると煙の中でアイエンホフトが実験を続けておりました。
”ここは危険です。すぐ避難してください”と消防士たちに言われたアイエンホフトはこう答えました。
”ちょっと待ってくれ、今、実験のいいところに来ているんだ”
まあ、こんだけ熱中して開発した心電図技術、医学の世界にはいろいろ賢い人々の研究がありますが、この研究だけは敵わない、地頭のよさで到底真似できないと感じる研究は心電図が筆頭でしょう。アイエンホフトは1924年、ノーベル賞を受賞し、人生の後半はオランダ•ユトレヒト大学医学部の内科教授として教育に従事しております。彼の開発した心電図は診断精度95%で、他の検査でこんなに正確に診断できる検査はありません。また、アイエンホフトがきちんと隅から隅まで研究しきっているため、医学が進歩した今日でも訂正する箇所はありません。世の中には頭のいい人がいるもんですね。
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